冷蔵庫にはいつもプリンを

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【感想】売野機子『ロンリープラネット』

 

ロンリープラネット (KCデラックス BE LOVE)

ロンリープラネット (KCデラックス BE LOVE)

 

 「まったく男って生き物はどーして……」

占い師の姉を持つ常磐一郎はイケメンだが大人になっても自分の外見を見て接近してくる女性たちとの距離感に悩んでいる。ハネムーンで海外にいる姉の代わりに原稿を渡したことで人気占い師「トキワ未来」と勘違いされ……
 
人生に不器用な一郎だけではなく、運命の出会いを求めるあまりエキセントリックな行動をとるCAの映子、秘めた恋を持ちながら家庭生活を続ける漫画家のリサと、脇役も一癖ある。タイトルのロンリープラネットは暗い夜空に浮かぶ星々が彼らの孤独な魂を表すとともに星占いのダブルミーニングとなっている。
構成が巧み。一郎の周囲のさまざまな登場人物が交錯するエピソードを過去と現在を行きつ戻りつ飽きさせない。「初恋の人」が偶然関係者として現れる多少のご都合主義は目をつぶる。そしてそのご都合主義を良い意味で裏切る結末も素晴らしい。
併録「その子ください」も表題作ほどの完成度は無いものの、「人生の偶然」というものをマジックとして描くことは共通している。