コミック電子書籍の表示品質
TVアニメにもなった『監獄学園』の万人好みの絵柄とは異なるアクの強いキャラクターとそれに良く合う力強い描線に圧倒されるが、読んでいて「あれ、これ画質が粗いんじゃね?」と気づく。本作はセリフが少ない割にルビのついたネームが多いのだが、これが潰れて判別不能なところがところどころに。気になり始めるとせっかくの作品に集中できない。
上画像の赤で囲んだ箇所を拡大表示したもの。
おわかりだろうか。ppiの低いPC(23インチのフルHDで約96ppi)の画面で見るとやや強調されてしまうが、ネームは画数の多い漢字がボケてルビは読めるか読めないかといったところ。力強い描線もかすれてしまっている。
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荒川作品は全体にクリアな描線で書き込みはしっかりしている割にコントラストのはっきりした線と緻密だが見やすい背景が特徴だが、やはりどことなくぼやけている。
「電子書籍なんてどれもこんなものじゃないの?」と思うだろうが比較のためもうひとつ別の出版社を見ていく。
KADOKAWAエンターブレイン
まずは今年の話題作、九井諒子『ダンジョン飯(2)』から。
文字のクリアさは比較にならないし、微妙なタッチの描線も再現されている。同じスペックのビューアで見たとは思えない。
同じくもう一作品。緻密で繊細な衣装の描きこみで定評のある森薫『乙嫁語り(7)』。
さすがに若干つらいところはあるものの水準はクリアしていると感じる。
集英社
集英社からもグルメとバトルというユニークな着想が注目の野田サトル『ゴールデンカムイ(3)』。
これは意外。きれいに見えるのだが実際には描線が結構劣化している。
小学館
スクエア・エニックス
躍動感のある人物タッチが特徴なのでドットが細かいと粗さが目立つものの描線やネームの判別は水準をクリアしていると感じる。
白泉社
講談社
最後にふたたび講談社を見ていく。
安彦良和『天の血脈(6)』。アニメーション作家出身の著者が描く人物の線はその緩急も含めて超絶技巧なのだが、線がかすれて残念な結果になってしまってもそれが味になっているのが皮肉だ。
同様に人物造形と妙な会話に特徴のある沙村 広明『波よ聞いてくれ〈1〉』これは結構惨憺たるものだと思う。
まとめ
「講談社の電子書籍は少し粗いんじゃないの?」ということである。現状のディスプレイや表示技術では紙の本同様のクオリティは困難としても、今回確認した中には明らかに作品の固有の味わいを損なっていると感じる作品がある。
他社はサンプル数が少ないのでそれぞれの出版社について確定的なことは言えないものの、講談社とそれ以外を比較すると明らかに前者が見劣りするのである。
原因はわからない。出版社間で品質に差があるということは入稿からデジタル化するプロセスで何か問題があるのかもしれない。いずれにせよアフタヌーン/別マガ作品を中心に講談社作品のファンとしては改善をお願いしたいものである。